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13の幻視鏡 吉村達也著

2013-04-03[読書ミステリ

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多作で知られている吉村達也さんですが、この「13の幻視境」は、単行本(文庫も)では未発表となっている短編を集めたものになっています。
13の幻視鏡 吉村達也著

長編をよく読んでいて、プロットの巧さや、人物の背景など気を配ることも巧い作家だと思ってはいましたが、短編でもその巧さは同じ、というか切れ味が一段と増している印象があります。


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これらの短編がどこに掲載されていたものなのかは、解説と読んでもらうと判明しますが、ほんと意外なところで書かれていたものが収録されています。というか、正直そんなところで連載したのかと思って驚いたくらいのところです、作家はいろんなところで活躍しているのですね。

なんて余談はともかく、13の幻視境はほんの少し現実とは違った世界を中心に描かれている作品ばかりで、設定の1つひとつはある意味「SFの世界」ではありますが、そのズレ感がなんともリアリティのあるもので、パラレルワールドとして存在していたもおかしくない雰囲気を持っているのが不思議です。

ちなみに、収録されているのはこちら

オニキスのチョーカー 幻視境1
危険なふたり 幻視境2
HHEY! TAXI! 幻視境3
YES,WE’RE OPEN 幻視境4
晩秋のクラウディア 幻視境5
恋するジェラート 幻視境6
着陸 幻視境7
大原 不断桜の誓い
宇治川 花散らしの霧
敵は本能寺にあり
グレイシャー・ポイント・ホテル
レイク・クレセントの風

この時点で気づく人も多いと思いますけど(あえて数を書きませんでした)、収録されているのは12編しかありません。それでもタイトルに「13」を使っているのは編集者の梶原秀夫さんの、そして作者である吉村達也の遊び心からなんですよね(吉村達也さんは昨年5月に亡くなられていて、この作品に関しては梶原さんだけで編集していて、吉村さんだったらと考えてつけたそうです)。

個人的には、幻視境7の「着陸」が一番心に残っている作品で、これは飛行機のパイロットのお話なんですが、突然のエンジントラブルが発生したにもかからわず、そのパイロットは着陸の方法がわからないといってパニックになります、、、

まさか、そんな、、、、
という感じはありますけど、このフライトが「人生と言うなのフライト」であり、長く飛んでいれば(=挫折のない人生を歩んでいれば)、着陸の必要がなかったため着陸の仕方を知らないと。そして、年老いてからの着陸がいかに難しくなるかを示唆しています。

いや、これね、一応サラリーマンとして働いている身としては、かなり「ドキッ」とさせられる内容でしたね。

少しブラックジョーク的なところが多いですが、短編でサクッと読みたい人にはお勧めの1冊です。

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