隻眼の少女 麻耶雄嵩著
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独特の世界観のある作品(基本はミステリ小説ですが色々と超越してます)を作っている麻耶雄嵩さんの久しぶりに文庫化された作品が「隻眼の少女」になります(ファンとしては待望の新作です)。
今作も今までの作品同様にとんでもない結末-「それをやったら探偵じゃない」というくらいの衝撃的な-が用意されています。麻耶雄嵩さんの作品は多く読んでいますけどかなりの衝撃でした。
<余談>
隻眼の少女の前に文庫化されたのが「蛍」という作品で、文庫化が2007年10月、その次の動きは2010年5月に「貴族探偵」が単行本として発表されるのですが、それまでは小説の発表はありませんでした(2年半ちょっとのブランクとなりますね)。
その後に、2005年7月に発表された「神様ゲーム」が2012年5月にノベルズ化されますが、文庫として発表されるのは今作(2013年3月発売)まで待つことになります。
↑すみません、自分は基本的に文庫で読むことが中心なので、文庫化を軸に考えてしまう傾向にあります。
[閑話休題]
脱線したので元に戻します。
物語の舞台は、スガル縁起という伝説が残る地「栖苅村(すがるむら)」。
このスガル縁起が物語の根底をなしつつ、より複雑にそして難解な方向に導いています(結果としては犯人の望む通りの筋書きですけど)。
そして、中心人物は栖苅村で唯一観光客を受け入れている宿「琴乃湯」宿泊している青年の種田静馬と探偵としてこれから名を売りたいと考えている御陵(みささぎ)みかげの二人。
同じ宿に止まっているとはいってもこの二人が初めて顔を合わせたのは、種田静馬が日がな一日過ごしている「龍の首」と呼ばれる、スガル縁起でも重要なポイントになる場所。そして二人が出会った翌日にその場所で1人の少女の死体が発見されます、、、、
この少女は、スガル縁起を継承する一家「琴折家」の本家の長女で将来的には「スガル」を継承する立場にある人物(ここの細かいところは読んでからのお楽しみで、ここではかなり重要な人物が殺害されたということにとどめます)。
この事件の解決に乗り出すのが、御陵みかげとなぜか助手(見習い)に選ばれてしまった種田静馬。もちろん、御陵みかげ以外に警察も捜査に乗り出すものの、一向に進展はないまま次の事件が起こり、連続殺人事件と発展していきます。
ひとつ解決の糸口が見つかると、ひとつ事件が起きるといった感じで追いつきそうで追いつかないもどかしい展開になっていますが、御陵みかげは独自の冷静な観察眼と閃きを武器にして、真犯人を追い詰めていきます。
ただ、この辺の追い込み方は麻耶雄嵩さんお得意の「メタ感覚」というか、一応の理屈は通るものの、結構ナナメからの切り口もあるので、本格派ミステリを愛読している人からみると「なんでもあり」の様相になっています。でもね、、、ここの無茶苦茶ぶり(言ってしまった)が最後の最後の結末から逆算すると「なるほど!!」となるから不思議なんですよね。
事件は当初琴折家だけに起こるものだと思っていたら、なんと御陵みかげの父親である山科恭一も同様に殺害されてしまいます。父親が殺されたことで意気消沈する御陵みかげを種田静馬は助手としてではなく「男」として一線を越えてしまいます。。。。
↑事件解決後二人は別々の道に進むので二人の仲が発展することはありませんが、物語としてはとても重要なファクターなので、あえて書きました。
ふ~~~
ここまででもだいぶ長くなっていますが、この事件を解決して終わりではなく物語は最初の事件解決から18年後に続いて行きます。
そうなんですよ、隻眼の少女は「1985年 冬」と「2003年 冬」の2部構成になっていて、18年の時を越えて同じ事件が発生し、それをどちらも御陵みかげが解決するという体裁になっています。
時間を超越している二人の御陵みかげが同一人物なのか、そして2つの事件の真犯人が誰なのかが最大の焦点となります(一度は解決した事件が蒸し返されるんですよ)。
そしてそのラストは本当に「そこかっ!!」と言いたくなる以外なものでもあり、それを動機にしちゃダメだろ、、と突っ込みつつも解決へのプロセスと登場人物たちの葛藤がしっかりと描かれているため内容的な違和感は覚えないのは作者の巧さですね(唯一冷酷な人には共感出来ませんでしたが)。
今回は少し[ネタバレ」を含むような書き方になっているので、勘の良い人はなんとなくわかると思いますが(笑
499ページとかなりの文量がありましたが、前半は純粋に御陵みかげの推理を楽しみ、後半は新しい事実に驚愕するとともに張られた伏線を一気に集約していく御陵みかげのスピード感を楽しむことができたので読んでいて「長いな」と感じることはありませんでしたよ。
設定や推理の中に少し「飛躍しすぎ」な部分はありますけど、それもまた麻耶雄嵩さんの作風ですから、自分としてはとても気に入った作品なので、凝り過ぎたミステリが好きな人には絶対的におススメです(本気の本格派しか読まない人にはおススメしませんが^^)。
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