世界でいちばん長い写真 誉田哲也著
当サイトではアフィリエイト広告を利用しています。
誉田哲也さんといえば、ドラマ、映画にもなった「ストロベリーナイト」の姫川玲子シリーズの猟奇的なシーンが印象的な警察小説が有名だと思いますが、この「世界でいちばん長い写真」はそんなシーンはまったくない純粋すぎる青春小説です。
主人公は親友の洋輔が転校してからつまらない毎日を送っている普通の中学生宏伸(ヒロノブ=一部の同級生にはノロブーとからかわれいる)。彼がある日従姉妹と一緒に引き取りにいった1台のカメラを手にしてから日常が一転します、、、、
青春小説ですから、ベースは主人公「宏伸」の成長記録なんですけど、物語スタートラインに立った時の宏伸の鬱々とした感情というか状態は思春期独特のものなんですが、表現の曖昧さがある意味リアルに感じるため、何気に感情移入してしまいました(同性だからですかね)。
まあ、そんなことは置いておいて、物語の主人公「宏伸」は中学校では写真部に所属しているものの、毎月提出する課題にも事欠くほどあまり部活動には熱心ではない中途半端な状態でフラフラしている状態で、まあ普通の中学校という印象だったりします。
そんな彼の日常が一転するのが、リサイクル業を営んでいる祖父の依頼で従姉妹の温子と一緒に取りに行ったカメラ「マミヤRB67」との出会い。
このね「マミヤRB67」が凄いのは普通のカメラと違い、カメラが回転して360℃一気に撮影できるという特殊な機能が備わっていること。いわゆるパノラマカメラというのが一般的かもしれませんが、写真部にいても普通の写真しか撮っていなかった宏伸にとってはこの機能はあまりにも衝撃的すぎることだったと。。。
ここからは従姉妹の温子、そして「マミヤRB67」を改造してパノラマ撮影をできるようにした松本さんなどを巻き込んで「世界でいちばん長い写真を卒業イベントで撮る」という目標に向かって加速していきます。
この作品で一番凄いなと感じたのは、宏伸の背中を押す人達が「こっそりと手を貸す」のではなくて「宏伸がやらなくてはならない」ということをしっかりと伝えてる点ですね。
よくある成長物語は主人公が(サポートはあるものの)自ら切り拓いていくことが多いと思いますがこの作品ではサポートが明確になっています。
これは宏伸が弱いからということよりも、人の成長には他人の協力が必要であり、協力を得たことに感謝することが大事、だということのメッセージでもあると思います。
ストロベリーナイト等々のイメージがあるため、ちょっと深読みもありますが、読了感も爽やかですし青春小説好きにはど真ん中ストレートの作品だと思いますよ。
Sponsored Links