北緯四十三度の神話 浅倉卓弥著
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浅倉卓弥さんの作品は作者が札幌市生まれのせいかもしれませんが、札幌が舞台になることが多く、この「北緯四十三度の神話」も舞台は札幌になっています(札幌って北緯四十三度に位置するんですね)。
そして、作品全体に漂っているのは白く寒い札幌の冬を思わせるような、透明感があります。ただ綺麗なだけではなく人間の孤独や葛藤も丁寧に描かれています。
物語の主人公は札幌に住む地元の大学の研究室で働いている姉の菜穂子と、地元のローカルラジオ局でパーソナリティを勤めている妹の和貴子の二人。
両親との死別、和貴子が東京の大学に進学したため別離、その後帰郷した和貴子は姉菜穂子の元同級生と婚約、そしてその婚約者の事故死と二人を悲しい出来事が襲います。
本来ならがここで姉妹が手に手を取って傷を癒しあうという展開になるのですが、本作の前半では姉妹がそれぞれに気を使いつつも、相手を本当の意味で「許す」ことができず、心に葛藤を覚えながら暮らしていく様が描かれていきます。
特にキーになるのが亡くなってしまった「元同級生」の存在。その彼を表立って争ったことはないものの、彼を巡る「女の感情」が二人を素直な気持ちさせずに内側、内側に誘っています。。。
しかも姉は冷静でありながらどちらかと言えば「陰鬱」に考えてしまう所があり、逆に妹は感情をどんどんと表に出して「発散」しているという対照的なところがあります(本質的な部分ではちょっと違うのですが、、、)
また、その感情の起伏の書き方がとても丁寧に描かれていて、感情移入とは少し違ったものですがどんどんと物語の世界に引き込まれています。
後半、和貴子が拘りに拘っていた「言葉」の真相が明らかになった場面では、亡くなった元同級生だけではなく、姉の愛情が一気に溢れ出てくるような印象があって、予想外に感動してしまいました(電車じゃなかったら泣いてたかも^^)
エピローグも含めて、秀逸な感動ストーリーに仕上がっているので、ミステリーとかサスペンスばかり読んでいる自分にはグッとささりました。
<余談>
自分は3人兄弟の長男だったので、兄弟、姉妹であっても、、というよりも子供のころからずっと一緒だった分、思春期や作品にあるような数年離れてしまった後の「変化」に対応できない(大きな変化よりも小さな変化のほうがよりインパクトは大きい)ということはよくわかります。
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