アイルランドの薔薇 石持 浅海著
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「アイルランドの薔薇」は最近じわりと(自分の中で)ブームが来ている石持浅海さんの長編デビュー作になります。でも、本当にこれがデビュー作かと思うくらい完成度が高いです。
実は石持さんとの出会いは「ガーディアン」という作品なのですが、これを読んで最初から読んでみたいと思ったのでデビュー作を手にしました。
アイルランドの薔薇の舞台は、アイルランドの湖のほとりにある一軒のロッジ。
そこに南北アイルランド統一を謳う武装勢力NCFのメンバーとNCFが雇った殺し屋『ブッシュミルズ』、探偵役となる日本人科学者(フジ)など、宿泊客が8人が泊まります。
最初は意気投合する8人ですが、翌朝になるとNCFの副議長が明らかな他殺体となって発見されるところから物語は急展開していきます。NCFの副議長を殺したのは誰なのか、そしてその目的は?
他からの侵入者も外に出ていった人間もいない「クローズド・サークル(嵐の山荘)」となったロッジの中で、日本人科学者(フジ)を中心に犯人探しが始まります。
密室や殺人に関してのトリックにはそれほどウエイトを置いておらず、どちらかというと叙述的トリックが中心の作品でしたが、人物描写、心理描写がくどくもなく的確に描かれているため、グッと引きこまれていきます。
背景となる南北アイルランド問題の説明は丁寧にされていましたが、万能過ぎるフジの活躍や、登場人物の大半が身分を詐称しているため、名前が複雑になっているところなどは少し引っかかりますけど、飛躍し過ぎではないため作品を損なうほどではないと思います。
本格ミステリーで、叙述的トリックが好きな人は是非手にとって欲しい作品です。
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