ニライカナイの語り部 鯨統一郎著
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鯨統一郎さんというと、『邪馬台国はどこですか?』やタイムスリップシリーズといった史実や伝説を新解釈したような作品が多いのが特徴ですが、このニライカナイの語り部はよりミステリに近い作りになっています。
それでも、沖縄の歴史や伝承を取り入れているあたりに、鯨統一郎さんらしさが出ているので、読み進めていくのが楽しい作品でした。
物語の主人公はデビューしたものの、次回作が書けず悩んでいるミステリ作家・六波羅一輝で、「ニライカナイの語り部」ではタイトル通り沖縄に行き(元々は取材旅行)、そこで発生するニライカナイランドに関連する連続殺人事件を解決するまでが描かれています。
沖縄に関する言葉のこと、伝承のこと、ニライカナイのこと、キジムナーのことなどといった蘊蓄については、かなりの深みがあって、読み応えはあるんですが、肝心の推理の部分がちょっとあっさりし過ぎていた印象がありましたね・・・
とくに真犯人を突き詰める当たりは、ロジックの積み重ねではなく六波羅一輝の第六感に頼り切っているので、(きっちり調べた)蘊蓄の部分とのギャップが大きく感じてしまい、物足りなかったですね。
もっとも、鯨統一郎さんの作風としては、どこか突き抜けた主人公が出てくるのが「常」ですから、物足りなく感じつつも「これぞ鯨統一郎!」と思うところも多くあるので、全体としては高評価の作品です。
<参考>
ニライカナイは、沖縄県や鹿児島県奄美諸島の各地に伝わる他界概念のひとつ。理想郷の伝承です。
六波羅一輝が主人公の作品はこの他に「白骨の語り部」、「都・陰陽師殺人」とあるようなので、今度読んでみたいと思います。
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