女が蝶に変わるとき 大石圭著
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この作品は「いつかあなたは森に眠る」というタイトルで単行本として出版された大石圭さんのデビュー2作目の作品を題名を変え、そして内容も大幅に加筆・修正して出版されたものです。
どうりで、最近の大石さん作品に比べるとファンタジー風な内容になっていて、主人公「僕」のキャラクターも前半と後半でガラリと変わっていて一貫性に欠けるように感じたんですね。
ちなみに、あとがきで作者自身が書いていますが、ラストシーンも原作とはまったく違う内容に書き換えているということなので、骨格は一緒でもまったく別の作品として捉えたほうがいいと思います(って自分はいつかあなたは森に眠るを読んでいないため、その差を語ることができません^^)。
物語は主人公の1人である「あなた」が最愛の息子を失い、そして長年一緒に暮らしてきた夫とも別れ、これからの舞台となる深い森の中にひっそりと佇んでいる洋館を訪れるところから始まります。
その館は「あなた」と同じような年代の女性が生活し、身の回りの世話は使用人がすべてやってくれる至れり尽くせりの場所で「あなた」が失ってきたものが再び見つけられる場所でもあるという。
そして「あなた」は館の主である子供の年齢に近い「私」と出会う。
これは偶然ではなく「私」は常に「あなた」を見つめ、そして出会うことを願っていたので、出会うべくして出会うことになるのですが、「私」と一緒の時間を過ごすことで「あなた」は失ってきたものひとつひとつ取り戻していきます。
ある日「私」は「あなた」に大きな秘密を打ち明けます。それは「私」の部屋の奥にある大きな冷凍室に眠る4人の女性の遺体。そして「私」は「あなた」にも同じようにここで眠って欲しいとお願いをします。
ここから「あなた」と「私」の心と体の交流が始まりますが、リアルでは濃密に繋がりつつも「あなた」は息子を「私」は母親を想いながら過ごす感じがなんともいえず切なくて、痛々しくもありますが確実に「あなた」は綺麗になり「私」も時間を楽しんでいるのが救いになっています。
性描写もリアルでありながら「人間味(特に女性に対する)」がしっかりとそして丁寧に描かれいるため「グロテスク」にならないのは大石さんの真骨頂ともいえますね。
大石圭作品&幻冬舎アウトロー文庫ということもあり、かなり際どい性描写もありますので、万人向けとは言えませんが、人間味のある作品なのは間違いないので、性描写(何度も書くなって)に免疫力がある人で少しダークな作品が好みの人は是非。
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