愛娘にさよならを 秦建日子著
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愛娘にさよならをは「アンフェア」としてTVドラマ、映画にもなっている刑事 雪平夏見シリーズの小説としては第4弾となる作品です。
映像化された作品はどちらかと言うと、派手なアクションと誰が犯人で誰が味方なのかといった警察内部の権謀術数の部分がフォーカスされていますが、小説版は策略の部分はほとんどなく展開してきます。
物語は前作「殺してもいい命」の最後で犯人に撃たれて気を失った雪平夏見が病院で目覚めるところからスタートします。
といっても、殺してもいい命は2011年7月20日に初版発行、愛娘にさよならをが2013年2月20日初版発行(ともに文庫版)と1年7ヶ月も間が開いているため一瞬「?」が浮かびましたけど(笑
そんなことはいいとして、銃弾に倒れた雪平夏見は怪我の後遺症で左腕の感覚をなくしてしまい、捜査1課から警務部監査官室に異動となり、第一線から退くことを余儀なくされるます。
刑事として働くことが生きがいだったため、戸惑いはあるものの娘(美央)とのことを考えると、今の職場も悪く無いか、、、、と思い始めたところに再び事件が襲ってきます。
その最初の事件が、新しい職場の上司である島津管理官の自宅でパーティーを行った帰りに、主催した島津管理官が何者かに襲撃されるというもの。そしてそこには『たのしみにしています、ひとごろし、がんばってください』と書かれたメモが、、
事件は1件では終わらず同じ手口の犯行が続き、異動したはずの雪平夏見も加えて捜査1課が捜査に乗り出すことになります。
左腕が麻痺していて今までと同じような動きができない中、持ち前の「勘」を最大限に生かしながら捜査を進めていくのですが、犯人へと辿り着く展開のスピード感はさすがの一言ですね。
犯人を追い込む刑事としての活躍も見ものですが、雪平夏見シリーズのもう一つのファクターになっているのが「母親」としての一面で、今作品でも娘の美央との距離感や仕事との葛藤がしっかりと描かれています(タイトルでもわかると思いますが)。
まあ、結果としては「母親」よりも「刑事」としての自分を最優先してしまうことは変わりないですけど、シリーズ当初の完全無敵の敏腕刑事というイメージが少しずつ変わっていって「弱さ」がじわりと滲み出てきているのも作品が動いている証拠なのかな、、なんて思ったりします。
タイトルでは「愛娘にさよならを」となっていますが、完全に「さよなら」をするシーンは描かれていません。これは読者に結末を委ねるというよりも、次回作への布石といえます。
正直、前の3作品を読んでいないとわからない部分も多くあるため、この作品から読み始めると疑問点が多く出てしまう可能性はあるので、できれば第一弾の「推理小説」から読むことをおすすめします。
あと、TVドラマ、映画ともかなり違っているので、映像化された作品のイメージを持って読むと「???」となるのでその辺は注意してもらったほうがいいかな。
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