ファンタジスタはどこにいる? 鯨統一郎著
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「ファンタジスタはどこにいる?」はタイトルが示す通りサッカーが舞台になっている作品です。ってサッカーに興味の無い人は「ファンタジスタ」という言葉が「?」でしょうけど(笑
とはいっても舞台設定がサッカーというだけで、サッカーを全く知らなくても十分楽しめる作品なので、サッカーを知らいないからといって敬遠しなくても大丈夫ですよ。
物語は、Jリーグ東京スターボウのディフェンダーで日本代表の候補でもあるスター選手の安東大吾が皇居外苑にある楠木正成像にまたがって爆死してしまうところから始まります。
いきなり「えっ、まじで」というところからのスタートで驚かされますが、サッカーに関連する本を制作していて、たまたまそこに居合わせた週刊誌の記者、黒木典絵が取材の名目で事件の調査に乗り出します。
もちろん、週刊誌の記者たちだけではなく、警察も事件の捜査にあたりますが、彼らの努力も虚しく第二、第三の事件が起こります。
しかもその事件もすべて被害者(当初は自殺か他殺かもわからないので被害者というよりは亡くなった人というのが正しいかな)はJリーガーという異常性をもったものになっています。
なぜ彼らは事件に巻き込まれたのか、そして犯人は誰なのか、その目的はなんなのか、が物語の骨格になっていくのですが、そこにJリーグのリーグ戦の展開が出てきて、リーグ戦を有利に戦うための犯行のように思わせてくるのがポイントになっています。
またJリーグとは別で<女神の御霊>という宗教団体も登場してきて、事件の奥深さを暗示してくるのですが、結末はJリーグとも宗教団体ともは全く違ったところで、しかも真犯人が驚きべき人物になっているのは、鯨統一郎さんの作品らしいある意味アクロバティックな内容になっています。
最後のところは少し強引な部分があるのは確かですけど、そこまでの積み上げ方と(回収できていないものも含め)伏線の貼り方も緻密だし、何よりもサッカーに関してしっかりと調べていることが伝わる内容になっているのはさすがですね。
ちなみに、時代設定は2004年で2006年に開催されるドイツワールドカップに向けたアジア最終予選を戦っている時期なので、サッカー好きなら間違いなく「懐かしい!!」となるところです。
なんかサッカーに囚われすぎて、作品の本質を書いていないような気がしますが、最初に書いたようにミステリとしての完成度は高いと思うので、サッカーの知識はなくても楽しめる作品であることは間違いありません。
でも、サッカーも好きな人が読むとより一層楽しめることも確かなので、サッカー好きな人は是非手にとって貰いたいなと。
<余談>
ファンタジスタというのはサッカー用語で、閃きや想像性が豊かなプレイで観客と魅了する選手のことを言います。
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