水野和敏トークライブでクルマ作りの原点を生の「水野節」で聞いてきた!! #ベストカーアンバサダー
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2015年9月19日(土)にベストカーアンバサダーチームのシークレットイベントとして、文京区音羽にある講談社で開催された水野和敏トークライブで「水野節」を生で聞いてきました!!
開発秘話とか、日産を辞めたあとのあれこれが聞けるかと楽しみにしていましたが、クルマの話はもちろんですがその中に含まれている「仕事の本質」を聞くことができてとても勉強になる2時間でした。
いやね、、、、
ほんと「クルマ(GT-R)の開発の苦労話」とかがメインとなるかと思ってはいたのですが、GT-R以前に今の日本のクルマメーカーのあり方の問題とか、クルマの開発でユーザーを置き去りにしているとか、スモールチームで開発することの重要性とか、幅広い内容になっていました。
そして、その1つひとつが水野さんの実体験に基づく重みがあるにもかかわらず、トークが軽快で歯に衣着せぬ物言いと相まって、ついつい引き込まれてしまいました。終了後にベストカー編集長の本郷さんが「誰も寝なかった」といって笑いを取っていましたけど、寝るなんてもったいない充実っぷりでした。
その全てを書き起こしたい、、という気持ちにもなりますけど、完全フリートークで(いい意味で)脱線も多いし、何よりも聞くことに集中していたため、メモも追いついていないので、心に残った部分だけピックアップしてレポートしたいと思います。
クルマ作りを本質から見直す
日産・GT-Rの開発では既存のクルマがどうだという視点からではなく、クルマ作りを本質(=原点)から見直した時にもっとも最適なものが何なのかを徹底的に突き詰めていって開発を進めていったそうです。
例えばの話で、エンジンの吸排気弁機構の一つにDOHC、SOHCなどがあるが、開発にあたってどちらを選択するかから始めるのではなく、そのクルマの方向性を考えていった中で、どの方式を選ぶのが最適なのか考える。などなどいくつか例を交えて話していただきました。
その中で具体的だったのが、エンジン内部のピストンの冷却方法。
ここ結構言葉で説明するのが難しいので、ざっくり箇条書きで(書き手の力不足ですみません)
1、エンジンのボディ、ピストンはアルミ製で作られている
2、アルミは熱による変化が大きいため、冷却のため鉄板を入れることが多い
3、アルミと鉄では膨張率が違うため、高温になるとバランスが崩れやすい
4、鉄ではなく0.2mmのメッキを入れることで冷却効果を上げることに成功
補足として書くと、たった0.2mmで大丈夫なのかというと、よく旅館の宴会料理に鉄板の上に薄い紙がひかれていてその上で肉などを焼くことがあると思いますが、この紙はどんなに鉄板が熱せられても燃えることはありません。これをヒントにして薄い素材でも補強しながら外の変化(エンジンの場合冷却)を伝えることができると。
最適重量論
水野さんのがクルマ作りの中でもっとも中心に置いているのがこの「最適重量理論」。
クルマは軽いほうがいいというのは一般的な考え方だと思いますが、ただ軽ければいいということではなくて、クルマのパワーやサスペンションのセッティング、空力特性など幾つもの要素を考慮していくことで、そのクルマの最適な重量が決まるというもの。
GT-Rのようなハイパワーのマシンであれば、闇雲に軽くするのではなく、ある一定の「重量」がなければ安全に走らせることができないというのが水野さんの考え。軽すぎた場合、タイヤに伝える「グリップ力」が少なくなってしまい、横滑りをしたりブレーキの効きが悪くなるなど悪影響が起こる可能性が高くなります。
後半の質疑応答ではGT-Rでも1250kgぐらいまで軽量化は可能というようなことも、、、、通常は1700kg前後。
可能というだけであって、安全面を考えるとあまり現実的ではない模様。
レーシングカーではもっと軽く作られていますが、レーシングカーの場合重量以外に「ダウンフォース」という空気の力を利用して荷重をかけてグリップ力をアップしています。サーキットという特殊な環境であればダウンフォースを計算できますが、変化の多い一般道ではダウンフォースを計算するのは難しいため、クルマ単体として計算する必要があると(一応ある程度のダウンフォースは計算に入っているそうです)。
最適重量論とは少し外れますが、話の端々から水野さんのクルマ作りの中で大事にしているというか、絶対に外せないのが「安全性」なんだろうなと感じました。GT-Rはハイパワーのモンスターではありますけど市販車ですから、ユーザーが事故を起こしにくい作り、そして万が一事故を起こしてしまっても被害が最小限になることを開発の段階から常に意識しているようです。
その辺りで象徴的だったのが「時速300kmで日常生活がおくれるクルマを作りたかった」という言葉かな。日本では法律上無理ですけど、ドイツのアウトバーンでは時速300kmは出せるので、そのな中でもタバコを吸いながら運転できるようなものを目指していたそうです。
クルマの楽しさ、面白さを伝えていない
ここは開発という視点ではなく、マーケティング的な視点になりますが、日本のクルマメーカーは政府機関が定めた基準をクリアすることを再優先していて、そのクルマに乗る人達に対して「クルマの楽しさ、面白さを伝えていない」点がクルマがつまらなくなっている最大の問題点だと指摘しています。
実はクルマ作りの中で、どうアピールするかも重要なポイントになっていて、開発の段階でも単に(お上からの)数字目標をクリアするだけの作りと、「楽しさ、面白さを追加」するのとではアプローチが違ってくるはずだと、そういう意味で日本のメーカーは効率を重んじるアメリカのメーカーに近づいていると懸念しているそうです。
確かに、日本のクルマのCMを見ると「低燃費!!リッター◯◯km」とか「衝突安全基準5つ星」といった基準をクリアしました!!といものが多くて、「このクルマに乗り換えると新しい人生が待っていますよ!!」的な感性に訴えてくるものは少ない印象はあります。
この考え方はWeb通販とかマーケティングの勉強会などに参加するとよく聞く話でまさに「ものを売るな」「ことを売れ」ですよね。
水野さんは自らクルマを開発することも行っていますが、それ以上に「日本のクルマ作り」についても考えているようで、ほんと広い視野をもって仕事に取り組んでいることがものすごく伝わってきました。
その他のキーワード
えっと、、、、
予定通りというか、思った通り長くなっているので、ここからはキーワードだけピックアップします。
・燃焼温度を上げて、ガソリンと空気の混合比を上げて爆発力を上げるのだ大事
・街のチューナーには「エンジンをいじらない」ようにお願いしている
下手にいじると壊れてします(オイルの温度管理も大事)
・燃費を良くするとパワーがなくなるとは考えていない
・パワーと燃費は両立する事が可能だと考えている
・改造してそっちのほうが凄いクルマを作るなんて、メーカーとしておかしいと思う
・欧州は自動車文化のため、通勤にクルマを使っているため、生の気持ちで開発に迎える。
・日本は電車通勤が多くて、メーカーの人間もクルマに触っている時間が短いのがすでに負けている(働き方も)
・ものを考えるときにの軸を「時間」で見ている
・失敗をどう成功に変えるかが重要
・チームは思考力の統一化で仕事をする
・エンジニアの仕事はグリップをいかに作り出すか
摩擦×力
・加速する時と止まる時のグリップは原則的には「同じ」でなければならない
・4つのタイヤの荷重が変化しないことが大事
・人間の能力追従性を信じていて、いつのまに使いこなしている
・新しい道具を与えることで別の世界ができてくるのを求めている。
・軽自動車は日本人しか作れない
・世界に輸出したほうがいいと常々いっている-エコロジーの象徴-
メモだけでもたくさんありますね、、、
水野さんがエンジニアということもあり、エンジニア視点でのお話でしたが、ビジネスパーソンとして仕事に生かせる部分もたくさんあって、とても勉強になりました。
特に「物事の本質をみる」ことは、システム部門にいるとどうしても「過去の遺物」が大事に見えたり「現状維持バイアス」に流されてしまうことも多々あるので、結果として改善は難しいとしても意識や提案の中には必ず盛り込んでいきたいと思います。
このような貴重な話を聞かせていただいた水野さん、事前準備を含め会場の準備等してくださったベストカーのスタッフの皆様ありがとうございました。
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