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九月が永遠に続けば 沼田まほかる著

2012-01-23[読書サスペンス

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店頭で「第5回ホラーサスペンス大賞受賞作」とか「国内ミステリー部門第1位」と書かれていたので、思わず手にとってしまったのが沼田まほかるさんの「九月が永遠に続けば」です。
九月が永遠に続けば

内容は後で書きますがホラーサスペンス、ミステリーとはちょっと違う系統で嫌いな人は嫌いな部分も多くあるものの、全体としてはとても完成度の高い作品に仕上がっています。


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物語の基本構成は、一人の高校生の息子の失踪し、母親が失踪した息子を追いかける中で今まで見えなかったもの(単純な家族の絆ではないです)を見つけていくという流れになっています。

ただ、、、
ホラーサスペンス、ミステリーと冠が付くだけあって、青春物語や恋愛小説と違い、母親を襲うのは「愛人の事故死」「元夫の娘の自殺」「元夫の歪んだ愛情」などといった完全に「人の闇」の部分になります。

また「闇」の部分には「性」も絡んでくるため、生々しい性描写も多くあります。この辺が、冠とはちょっと違う印象を与える部分なんですよね、、、

物語の構成上必要なところだとは思いますけど、性描写が生々しくなってしまっている分「心理描写」が薄っぺらく感じてしまうのも事実でした。

その最大の理由が、登場人物たちの人間関係がもの凄く「濃い」ことが上げれれます。

人間関係の「濃さ」が物語の根底を支えているので1つだけ、最初に事故死する母親の愛人は元夫の娘を狙っている青年で、元夫の口からその存在を知り母親がなぜか興味を持ってしまうところが始まりです(ここにはある種の当て付けもあると)。

ここまでだと「ドロドロ」とした物語になる感じですけど、ここに息子の友人の父親で「関西弁で空気を読まない怪しいおっさん」を登場させることでて、良い意味で「中和」させています。

このおっさん、最初は本当にただズケズケとものを言うだけの人だと思っていましたが、物語がディープなところに入ってきて、その他の登場人物たちの「裏の顔」が見えてきても一人だけ「変わらず」いることで、気がつくと作品のニュートラルを支える大事な存在に変わってきます。

息子の失踪の原因と、それに絡まっていく事件の真相はちょっと意外なもので驚きがありましたが、根底には無条件に男を惹きつけてしまう魅力を持った一人の女性が中心となって起きる負の連鎖だといえます。

ただただ、人間の醜いところを描き続けるだけではなく、作品全体を通して「バランス」が取れているあたりに沼田まほかるさんの上手さを感じる作品だと思います。しかもこれがデビュー作というのも驚きです。

<注意>
性描写は本当に生々しいので、苦手な人は絶対に読まないほうがいい作品です。

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