悪の教典(上)(下) 貴志祐介著
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2012年11月には映画公開が決定している貴志祐介さんの著書、悪の教典の文庫版の上下巻を(ある程度は予想がついていましたが)一気に読破しました!
正直読了感はイマイチ良くなくて簡単に言うと「後味の悪い作品」なのは確かなんですけど、主人公の蓮実聖司があっけらかんしている分「ゲーム感」が強いのも特長になっています。
でも、その「ゲーム感」が強い分逆に「怖さ」も感じる作品で、今ある倫理観を少しでもズレて捕らえる人がいれば現実社会でも蓮見聖司のような人が現れてもおかしくない雰囲気がひしひしと伝わってくるんですよね、、、
実際現実社会でも「悪の教典」のような教師が教え子をまとめて殺していくシチュエーションはなくても、連続殺人事件(シリアルキラー)の話は枚挙にいとまがないですし。
物語のアウトラインは、話術がうまく心理学にも精通していて生徒に人気があるものの、他者への共感能力が決定的に欠けていて、自分に都合の悪いことは殺人を犯してでも徹底的に排除してしまう晨光学院町田高校の英語教師の蓮見聖司が、文化祭の前夜に教え子を皆殺しにしようとする一夜のお話。
この時点でも、かなりの殺戮劇が繰り広げられることがわかりますが、これが文庫版で2冊にまでなっているのは、文化祭前夜の皆殺し劇の前に蓮見聖司という男がどんな男なのかと、皆殺し以前の犯罪(多くは殺人)を細かく描写しているからです。
このプロローグというにはあまりにも長い描写のおかげで、読者は蓮見聖司がどんな人物なのかに気付かされ、そして「恐れ」をもったタイミングで物語のクライマックスに向かって加速していくことになり、後半の「怖さ」と「興味」をいっそう増してくれることになります。
この持っていき方と、そこまで読ませる貴志祐介さんの描写の上手さ、具体的な描写もそうですが各人物の心理描写もしっかりと描かれているはさすがの一言です。
あまりに気楽に殺人が行われるので、その辺の耐性のない人には絶対にお勧めできない本ですけどね^^
ちなみに、映画はあの三池崇史監督で作られているそうなので、蓮見聖司のキャラクター作りや映像描写も気になりますが、なによりも「原作をどれくら壊しているか」がとても気になるところです。
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